窓の米印

竹村おひたしです。


いまさらですが台風15号と19号、たいへんでしたね。

被害に遭われた地域の方々へ心よりお見舞いを申し上げます。


台風19号は史上最高レベルの大規模台風だというので、自分も台風上陸の数日前から防災情報めあてにツイッターをひんぱんに見ていました。


すると「防風で窓ガラスが割れるおそれがあります」というおそろしいつぶやきが流れてきました。「だから雨戸をしめましょう」と続きますが、自分の住まいには雨戸がありません。


どうしたものかと思っていたら「雨戸がない場合は窓にガムテープを米印に貼るとよいですよ」というアドバイスが流れてきました。窓に米印のテーピング。戦時中を描いた映画などでよく見かけるやつです。防風でガラスが割れるのを防ぎましょうというよびかけです。


つぎに「ガムテープの糊はガソリンで落ちます」という情報が流れてきました。いわれてみれば窓にガムテープなんか貼ったら粘着面がはくりしてガラスに残り、あとしまつがたいそう手間にちがいありません。それを見越したお助けツイートです。


そこへ「いやいやいや、ガムテじゃなく養生テープを貼ればいいじゃない」という意見。養生テープというのは粘着力が弱いテープのことです。塗装などにもちいられる、半透明の緑色をしたアレですね。たしかにはじめからそちらを使ったほうが簡単そう。養生という単語もなんだか人にやさしそう。


では養生テープを窓に貼るで一件落着…と思いきや、「ホムセから養生テープが消えた!」というニュースが流れてきました。ツイッターを見た人々がこぞってホームセンターへ買いに走ったようです。ECサイトでの販売ものきなみ完売になっていました(ふと「もしかしてフリマサイトで売られたりするのだろうか? そして配送ネットワークが機能していないことに気付かない人が買うのだろうか?」などと考えました)。


そうしているうちに「窓にテープを貼るとかえって割れやすくなる」というツイートが流れてきました。ごていねいに研究結果の資料も添えられています。窓にテープなどを貼ると耐久圧力とやらが下がり、ガラスの強度が落ちてしまうとのこと。そうなの?


すぐさま「窓が割れるのを防ぐのではなく、割れたときの飛散防止のために貼るのだ」という反論的なツイートが流れました。そうですね。割れた窓ガラスが風で飛んできたらケガをしてしまいますし、乳飲み子のいる室内にちらばったりすると危険ですもんね。あと乳飲み子がいなくても危険ですし。


すると「飛散防止なら段ボールなどを窓の内側に貼るのがよい」というツイート。なるほど、線よりも面で対策を取れと。しかも段ボールであればガラスが割れたあともいくらか雨風も防ぐことができると。親切に写真つきで解説しているツイートも見かけましたが、窓から見えるベランダや景色でおうちが特定されてしまわないかちょっと心配に。


…ここからまたパターンの踏襲がはじまるのだろうか。段ボールにビニールのゴミ袋をかぶせるとよいとか、段ボールのかわりに水に強い素材などを提案するツイートが出てくるのかしら——

と思ったところで猛烈な眠気におそわれ、まだ日の高いうちから気を失うようにして寝てしまいました。


そういえば自分は気圧の変化に弱く、雨が降ると眠ってしまう体質なのです。低気圧のかたまりである台風が通過するときはたいてい爆睡しています。


ですから窓の暴風対策について、結局のところどの方法がいちばんよかったのかという最終結論は確認することができませんでした。

この一連のツイート合戦をさいごまで見届けられず、ざんねんです。


ちなみになにもせずに寝てしまったのですが、窓はぶじでした。


竹村おひたし

illustrator Takemura Ohitashi