模倣表現


竹村おひたしです。


5月のクリエイティブEXPOでこんなことがありました。


会場をウロウロしていたときのこと。

ブースで作品パンフレットを配っているイラストレーターのA氏にあいさつをすると、A氏はイライラした様子で自分に言いました。


「聞いて下さいよ。X君がBさんの絵柄をパクってるんですよ!


クリエイポでは、出展者同士で作品パンフレットを交換することがよくあります。

自分もX氏とは顔見知りなので、パンフレットを1部もらっていて、Bさんがよく描くキャラクターに酷似したイラストが載っているのは知っていました。自分もひと目で「これはBさんのタッチをまねたのだな」と思ったので、覚えていたのです。


「ああ…。たしかによく似ているのがありましたね」

「偶然似たわけじゃないんですよ。クライアントに『Bさんのキャラのように描いてくれ』って発注されて、断らなかったんだそうです」


無名のイラストレーターは、著名なイラストレーターのジェネリックイラストを求められることが、まれにあるのです。

さらにフリーランスとは立場の弱いいきものですから、一度依頼を断わると二度と仕事の依頼が来ないかもしれない、という恐怖にさいなまれながら日々をおくっています。

X氏もきっぱりと拒否することができなかったのでしょう。


「やむを得ず描かされたのだとしても、僕はX君がそれを自分の作品として堂々とパンフに載せているのがゆるせないんです!」

憤りながら、通りがかる来場者の方々に自分の作品パンフレットを配るA氏。


そのパンフレットの表紙には、某名作ゲームのビジュアルデザインを自身のタッチで忠実に模倣したA氏のイラストがドーンと載っていました。


よくできた小咄だなあと思いました。


個人的にはX氏のケースはアウト、A氏はセーフかなと思いますが、法律的にはどうなんでしょうね。



これからますます暑くなります。みなさまご自愛ください。





竹村おひたし

illustrator Takemura Ohitashi