叔父の一生

竹村おひたしです。


都心のマンションでひとり暮らしをしていた叔父が、亡くなりました。 

正確に言うと、マンションの自室で腐敗していた叔父が、発見されました。 

(事件性はないとのことです) 


叔父は物静かな人で、誰の目から見ても善良な、きちんとした人物でした。

病気がちだった祖父のかわりに子どもの頃から働き、一家の家計を支えたそうです。


定年まで勤め上げた会社は、誰もが知る大企業でした。

年金の受給が始まり、悠々自適の人生がスタートしたばかりでした。


叔父の部屋の後しまつをした母は、しばらく伏せっていました。

現場の壮絶な様子を聞かされていたので、そのせいかと思ったら、

母が寝込んだ理由は、別件でそれ以上のショックをうけたからとのこと。


なにやら叔父は、かなり〝うかつ〟な状況で亡くなっていたらしいのです。

母は詳細を語ろうとはしませんが、概略はがんがん語るので、

叔父の性癖についての話だと察しがついてしまいました。


一族のなかでも控えめで、自分のことは後回しにするタイプの叔父が

なにか特殊な趣味を持っていたのかと思うと

「部分的にでも叔父の生活が充実していたことがわかって、なんだかよかった」

と、勝手ながら救いのようなものを感じてしまいました。


自分は叔父のことが好きでした。 

救われてほしいと願います。 

竹村おひたし

illustrator Takemura Ohitashi